開発会社に依頼する前に作るべき "1 枚設計書"

要件定義の前に、目的・業務・画面・データ・運用を 1 枚に整理する。

この記事の結論


「仕様が固まっていないのですが、相談していいですか」

min's への相談で、最も多い前置きです。答えは、仕様が固まっていない段階こそ、相談してください です。

ただし、完全に手ぶらで来ると、相談時間の大半が「現状を聞き出す」ことに使われてしまい、外注先の提案を聞く時間が残りません。そこで、相談前に揃えておくと相談の質が変わる「1 枚設計書」のテンプレートを公開します。

完璧でなくてかまいません。むしろ、1 枚に収まる程度の情報量 を意識して書くことが、相談の質を上げます。

なぜ「1 枚」なのか

1 枚設計書には 3 つの効果があります。

1. 外注先の提案の幅を広げる

詳細な仕様書を渡すと、外注先は「指示通りに作る」モードになります。1 枚に絞ると、「もっと安く / 速く / 上手く実現する方法」を提案する余地 が残ります。

2. 認識ズレを早期に発見する

社内で 1 枚を書くプロセスそのものが、社内の認識合わせ になります。経営・現場・IT 担当で「何を作りたいか」が食い違っているケースは多くあり、1 枚設計書を書く過程でそれが顕在化します。

3. 見積もり精度が上がる

1 枚に必要な情報が揃っていれば、外注先は「同じ前提」で見積もりを出せます。複数社に同じ 1 枚を渡せば、見積もり比較が意味を持ちます。

OpenAI のドキュメントでは、Codex に渡す AGENTS.md という設定ファイルが説明されています。これは作業を始める前に Codex に読ませる「プロジェクト固有の指示・標準・制約」をまとめたファイルです (Custom instructions with AGENTS.md / OpenAI Developers)。Anthropic の CLAUDE.md も同様で、コードベース固有の構造・規約・ワークフローを記述し、毎回の対話で読み込ませる仕組みです (Using CLAUDE.md files / Anthropic)。

「AI に作業を始めさせる前に、プロジェクトの地図を渡す」 という発想は、外注に発注する前の 1 枚設計書とまったく同じ役割を果たしています。

1 枚設計書に入れる 7 項目

A4 縦 1 枚、または横長スプレッドシート 1 シートに収まる量で、以下の 7 項目を埋めます。

1. 目的

「何のために作るか」を 1 段落で。

店舗の予約管理を、紙と電話から SaaS に移すことで、予約取りこぼしを減らし、複数店舗での状況共有を可能にする。

2. ユーザー

「誰が使うか」を、人数規模と利用頻度まで。

3. 業務フロー (現状)

いま、どうやっているかを正直に。

4. 画面 / 機能の優先順位

Must / Should / Later / Never の 4 段階で、機能を仕分け。

区分内容
Mustログイン、予約一覧、予約作成、ステータス変更
Should月次レポート、店舗別の集計、顧客マスター
Laterスマホ通知、自動キャンセル、AI による予測
Neverチャット機能、SNS シェア

5. データ

主要なデータと、その項目を 1 行ずつ。

6. 権限

役割と、見える / 編集できる範囲のマトリクス。

ロール自店舗予約他店舗予約顧客情報レポート
店舗スタッフ閲覧・編集×閲覧×
本社管理者閲覧閲覧閲覧・編集閲覧・編集
経理×××閲覧

7. 運用責任

リリース後、誰が何をやるか。

悪い依頼文と良い依頼文

悪い依頼文

予約管理システムを作ってください。よくある予約システムです。予算は応相談、納期も応相談です。

これだと、提案も見積もりも出せません。

良い依頼文

上記の 1 枚設計書のとおり、店舗予約システムを構築したい。重要なのは「店舗スタッフが iPad で 1 日 30 回触っても疲れない UI」と「複数店舗の本社集計」です。AI / SaaS の活用提案も歓迎です。予算は構築 300〜500 万円、月額運用 30〜50 万円のレンジで検討しています。希望リリースは 6 月、絶対の締め日は 9 月の繁忙期前です。

ここまで渡せば、外注先は「どう作るか」「どう削るか」「AI でどう短縮するか」を含めて、提案できる状態になります。

1 枚設計書の使い方

実際の進め方は以下のとおりです。

  1. 社内で 1 枚を書く (経営・現場・IT 担当の 3 人で 2 時間ほど)
  2. 複数の開発会社に同じ 1 枚を渡す (相見積もりを取る場合)
  3. 30 分〜1 時間の相談で、外注先からの質問に答える
  4. 提案・概算見積もりを受け取り、比較する
  5. 詳細な要件定義は、契約後の最初のフェーズで一緒に進める

このプロセスだと、外注先選定にかかる時間は 2〜4 週間程度で済みます。1 枚もない状態で問い合わせると、各社で「現状ヒアリング」だけで 2〜3 時間かかり、選定に 2 ヶ月かかることがあります。


ここまで読んで「1 枚を書くのも難しい」と感じたら、min's では 1 枚設計書のたたき台を一緒に作るスポット相談 を行っています。

1 枚設計書を一緒に作る相談を申し込む →

min's での実際の進め方

min's では、相談時に 1 枚設計書がなくても問題ありません。30 分の相談時間で、

という形で、相談の場で 1 枚を一緒に組み上げます。社内に持ち帰り、関係者でレビューしてから、本見積もりの依頼につなげるのが典型的な流れです。


発注前の整理から相談したい方へ

min's では、開発外注を検討中の方向けに、1 枚設計書のたたき台作成から、概算見積もり、外注先選定までを支援しています。

以下のような状態であれば、ご相談ください。

次に読む記事

参考

動くデモで終わらせず
本番まで持っていく開発

AI で作りかけたもの、止まりかけている開発、新しいプロダクトの構想。 まずは現状を整理するところから、ご相談ください。